前編では、DXで推進することや必要性、得られる効果についてご紹介しました。
今回は、DXの基本的な進め方や推進時のポイントについて、経済産業省が発表している「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(以下DX推進ガイドライン)」をベースにご紹介します。
DXの進め方
DXの進め方として、経済産業省が発表している「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(以下DX推進ガイドライン)」では、大きく分けて以下の2つのステップがあるとしています。 (引用:経済産業省「DX推進ガイドライン」)
(出典:経済産業省「DX推進ガイドライン」)
ステップ1.DX推進のための経営のあり方、仕組み
1つ目のステップでは、以下の5つが重要なポイントになります。
①経営戦略・ビジョンの提示
DX推進によって、企業として何を実現していたいのか、具体的なビジョンが描かれていなければ効果的なDXを実現することは難しいと考えます。
そのため、DXを推進する上では、どの事業分野で、どのような方法で、どのような新しい価値を生み出したいのか、DXによって実現したいビジョンを具体的に描く必要があります。
②経営トップのコミットメント
経営トップが漠然と「DXを推進しよう」と言ってもDXの実現は難しいと考えます。
DXを推進する上では、経営トップがDXによって組織のあり方や業務自体を変革していくことに当事者意識をもって取り組むことが重要です。
③DX推進のための体制整備
DX推進のための体制整備には、以下の3つの項目があります。
(引用:経済産業省「DX推進ガイドライン」)
DXを推進する上では、経営トップが各事業部門に対して、新たな挑戦を積極的に行っていくマインドセットを持つことができる仕組みづくりや、サポート体制の整備をすること。そして、DXの推進に必要な人材を育成、確保していくことが重要です。
④投資等の意思決定のあり方
DXを推進する上では、投資等の意思決定の指標も重要なポイントになります。コスト面や目に見えるリターンだけで判断されていないか、投資をする場合のリスクだけでなく投資をしない場合のリスクまで考慮できているのかなど、投資に係る意思決定の指標を考慮することが重要です。
⑤DXにより実現するもの:スピーディーな変化への対応
DXの推進は、多くの場合企業の競争力強化のために行われると考えます。そのため、DXによるビジネスモデルの変革が、経営方針転換やグローバル展開等のスピーディーな対応を可能にし、自社の競争力強化に寄与するのかについて考え、DXを推進することは非常に重要になります。
ステップ2.DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築
2つ目のステップでは、「体制・仕組み」の観点で以下の3つ、「実行プロセス」の観点で以下の3つが重要なポイントになります。
【体制・仕組み】
①全社的なITシステムの構築のための体制
新しいITシステムを構築するためには、組織内で適切に役割分担し、部署ごとでの連携も上手くいくように体制を整える必要があります。また、DXによって実現したいビジョンを叶えるために必要なデータの収集・活用が効果的にできるITシステムの全体設計を描ける体制・人材の確保が重要になります。
②全社的なITシステムの構築に向けたガバナンス
部門ごとの個別最適となるようなITシステムの導入・変革では、システムの連携が複雑化し、企業としてシステムの全体像がブラックボックス化した状態になることが懸念され、DXの成功には繋がらないと考えます。そのため、このようなブラックボックス化を防ぐためにも、全社最適を意識したITシステムの導入・変革と、ベンダー企業に丸投げせずユーザ企業自身がシステム連携基盤の企画・要件定義を推進することが重要です。
③事業部門のオーナシップと要件定義力
企業全体でDXの目的について共通認識をもつことは重要ですが、合わせて各事業部門においてもオーナーシップを持って、DXにより実現したいビジョンを描き、実現に向けた推進をしていくことが重要です。そのうえで、各事業部門においてもベンダー企業に丸投げすることはせず、描いたビジョンに基づいて要件定義を主体的に進めていくことが重要になります。
【実行プロセス】
①IT資産の分析・評価
新しいITシステムの導入前に、まずは現在社内で利用しているシステムの現状を把握する必要があります。社内のPCやサーバー等のハードウェア、ソフトウェアなどのIT資産の現状を分析・評価することが必要になります。②IT資産の仕訳とプランニング
現状分析の後には、以下の観点を意識して、自社のシステム環境のプランニングをすることが重要になります。・ビジネス環境の変化に対応できるシステム環境か?
・全社最適なシステムか?
・自社の競争領域であるコア業務を精査し、ノンコア業務については標準パッケージを利用するなど、リソースの重点配分ができているか?
・不要となったシステムやIT資産を廃棄できているか?
③刷新後のITシステム:変化への対応
新しいITシステムを導入しただけでは、DXは完了とは言えません。システムの導入後も、企業としてDXにより実現したいビジョンに基づき、ビジネスモデルの変化に迅速に対応できるように、システムの改修や、新システムの導入など、継続的にDXを推進していく意識が重要になります。
また、導入したITシステムは、DXにより実現したいビジョンを叶えることに繋がっているかどうかを評価基準をもとに評価していくことが重要です。
DX推進時のポイント
DXを推進する上でのポイントについて、澁谷裕以氏(ITコーディネータ協会 会長)が日経XTECH「『ITオンチ』経営者への処方箋」の中で非常に有意義な意見を述べているため、、澁谷氏の意見をご紹介します。
- 良いDXは良いビジョンから
- 個別最適のままではDXはできない
- デジタル人材の不足を嘆くより、行政トップや経営者のコミットを
各ポイントの詳細については、以下の記事で澁谷氏の意見を要約する形でご紹介しているため、ご興味のある方はご参照ください。
関連記事:DX推進のポイントとは?~日経XTECH「ITオンチ」経営者への処方箋「人材不足を嘆いても仕方がない、経営者や行政トップはDXで必要な3点を知るべし」要約~
まとめ
2025年の崖を乗り越えるためにも、今後より一層DXへの関心は高まり、企業の競争力への影響力は益々高まっていくと考えられます。
そのため、少しでも皆様のDX推進のお力になれるよう、本協議会もDXに関する情報を引き続き発信していきたいと考えています。
本記事が、DXを推進されているユーザ企業の担当者様やCIOの方、今後DXの推進を担っていきたいと考えている方にとって、少しでもお力になれば幸いです。 「CIOシェアリング協議会」の考え方、ビジョンにご興味を持っていただけた方は、ぜひメールマガジンのご登録をお願いいたします。 ご不明な点やご相談等がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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投稿者プロフィール
- 新卒で株式会社グローバル・パートナーズ・テクノロジーにアソシエイトコンサルタントとして入社。2020年より一般社団法人CIOシェアリング協議会の運営に関わる。