12月20日(月)に日経クロステック主催で開催された「2022年のDXと情シスを占う」で当協議会代表理事の長谷川秀樹氏が日経BP中村建助氏とディスカッションを行いました。
DXと情シスをテーマに行われた上記ディスカッションの中で特にポイントと思われるところを前編、後編に分けてご紹介いたします。 本記事は、自社のDXを検討、取り組みを推進している情シスやDX人材の皆様にとって参考になる内容となっております。
真のDXとは?
DXと言われたときにどういうことから考えるか、DXに取り組む上で知っておいた方が良いことなどを教えてください。
DXの定義は人それぞれでありCIOによってもそれぞれで、コンピューターエリアの方はシステムの刷新、コンサルはイノベーションがDXでコンピューターは関係ないと言われる方もいます。
僕の場合、「デジタルの住人になる」(非常に高い生産性で仕事をしている状態)ということがDXだと考えています。
メルカリにいたときの経験が強烈でした。創業短いネット企業はおそるべき生産性で、非常に優れたオペレーションで業務を行っています。
一例を挙げると、ペーパーレスを推進しようとするときこういった取り組みはトップダウンからだろうということで経営会議からペーパーレスにしようとなりiPadを配布して実施します。
すると、「A4はいいがA3を想定して作成された資料はiPadでは読みにくいから今度からA3だけは印刷しましょう」ということが起こります。これは何がまずいかというと我慢してiPadで見る、デジタルを使おうとしているところです。「紙は確かになくなったけど、メモもできないし本当にデジタル化っていいのかな?」と感じ、元に戻ってしまったり不満が出てしまったりします。
会議のやり方自体は今まで通りのままで、配布資料だけをペーパーレス化しようとするから我慢することになってしまうのです。
メルカリのときも現在CIOを務めているコープさっぽろもそうですが、会議のやり方自体が大幅に変わっています。
従来の会議の場合、第一号議案を説明してみんなが質問して答えて、次に第二議案・・・と進みますが、我々の会議の場合は会議が始まったらPCを開いてGoogleカレンダーから議案のリンクをクリックする、WordのようなGoogle Docsが立ち上がる、第一号議案を誰かが説明を開始すると同時に参加者がコメント機能を使って質問をします。
対面の場合、誰かが話すと他の人は黙って聞きますが、PCのドキュメントの中だと参加者は並列で質問ができます。議事録担当者も会議に参加しながら追記し、議事録の内容に違うと思う箇所があればそう思った人がその場で修正します。
そこまで会議のやり方を変えると、デジタルにする意味があると感じますが、紙だったものを画面で見るだけだと「意味あるの?」と思ってしまいます。
業務自体を変えないと堅苦しいデジタルになってしまうのです。変えたらすごく気持ちよく業務が回るので、今回取り上げた会議は一例ですが業務自体を再構築することをおすすめします。従来の業務のままデジタル化を図るのではなく、デジタルを利用して気持ちよく業務ができるように業務自体を再構築する。
DXを進めるために必要な2つの役割
コープさっぽろは長谷川さんが入社されてから会議のやり方を変えたとのことですが、ハードルはありましたか?
DXを推進するにあたり、2つ役割のメンバーが必要だと思います。
1つはアフターデジタル、DX後の世界を体験して理解している人、実現したい形を理解している人。
もう1つはそれを社内に展開できる人。
この2種類のチームあるいは人間がいないと、”笛吹けど踊らず”または”何していいかわからない”状況になってしまいます。
コープさっぽろの場合は、展開が得意な人がいました。
トップの人に話したり、草の根運動みたいに広げたり、研修を開いたりと強力なメンバーがいましたが、もしいなければ“笛吹けど踊らず”状態だったと思います。
DX後の世界を体験して理解している人と社内展開が得意な人の2つの役割を持つ人材が必要。
生産性が高い状態とは?
DXは出口の1つの見え方で、日本の企業は利益率、生産性が低いとよく言われていますが、最先端のDXを実現しているGAFAのような会社はよく見ると売上高、営業利益率の伸び方も相当良いと思います。
そこまでではなくても色んな会社が色んなレベルで結果を出せるところがDXの注目されている理由かと思います。
エンタープライズとベンチャーでは、経営会議にあがる議案の数、中身が全然違います。ベンチャーの方が圧倒的に多いです。
生産性が高いとは、経営がうまく回っている状態とは、何をもって言っているの?と言うと、経営会議にあがる議案数、中身だと思います。
議案が多ければいいわけではありませんが、議案が多ければ何度もスパーリングをして実行に移します。
エンタープライズでは議案になったときはもうやるしかないみたいな状況が多いと思いますが、議案が多ければ事前スパーリングを何度も行うことになるため、議案が多い方がよいと思います。
どちらの方が頭がよいかではなく、どちらの構造が効率のよいオペレーションかです。
5年以上の歴史、3000億円規模の会社であるコープさっぽろでも変わることができるので、皆さんの会社でもうちは無理だと思わずに“できる、変えられる“と思ってもらいたいと本気で考えています。
企業規模や業態によって自社には無理だと思わず、できる、変えられると考え、では何から変えていこうか?と考えることが大切。
投稿者プロフィール
- 新卒でSIerに入社し、法人営業、商品企画を担当。後に株式会社グローバル・パートナーズ・テクノロジーにコンサルタントとして入社。2021年より一般社団法人CIOシェアリング協議会の運営に関わる。
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