現在、日本の年間売上100~1000億円規模の企業のCIO設置率は14%と言われております。
中堅企業においてもIT活用の重要性は増していてIT投資は増加傾向にある昨今、なぜCIO設置率は14%にとどまっているのでしょうか。
そこには、CIO人材もほかの人材と同様に正社員としてフルタイムで定常雇用するという固定観念があると考えています。
この記事では、人材のフルタイムでの定常雇用という前提を見直し、CIO人材をシェアするという考え方をご紹介します。
社内のIT体制を強化したい企業様において、この記事が体制強化に向けたヒントになれば幸いです。
中堅企業においてCIO設置が難しい理由
それは、IT業務量が一定ではないため、CIOを担える高度な人材の定常雇用を続けることが難しい状況にあることです。
特に中堅企業においては、システム見直し等のタイミングが限られていてIT業務量の変動率が大きく、高度なIT人材を必要とするタイミングも限られています。
そのため多くの企業ではCIOを設置せず、IT投資の際に経験やスキルが不足した人材で対応せざるを得ないケースが多くみられます。
その結果、IT投資をしたが思ったような成果が得られなかったという経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
システムの利用状況と密接に関係する「満足度」に着目し、システム開発において最も回避すべき状況の一つといえる「当初の計画通りにシステムが利用されていない」理由の調査では、最もポイントが高い理由に「要件定義が不十分」(35.2%)、次に「システムの企画が不十分・適切でなかった」(31.8%)など上流工程における課題が挙がりました。
(参考:「ITプロジェクト実態調査 2018」、日経 xTECH/日経コンピュータ)
「CIOシェアリング」という新しい「人材登用」の考え方、「働き方」の考え方
そこでご提案したいのが、「CIOシェアリング」という考え方です。
「CIOシェアリング」とは、「フルタイムで定常雇用」という常識を見直し、「質の高い人材を、業務量の変動に合わせて登用する」考え方です。
なぜ「CIOシェアリング」なのかと言いますと、フルタイムで定常雇用することを前提にすると、IT業務量の少ない期間も多い期間も雇用する、もしくは雇用しない、という2つの選択肢に限られます。
そのため、定常雇用という前提を見直すことで、必要な期間、必要な人材の雇用を実現することが有効ではないかと考えています。
CIOシェアリング協議会では、「CIOシェアリング」のモデルで働くCIO人材のことを「CIOシェアード人材」と呼んでいます。
ここでCIOシェアード人材の働き方の例をご紹介いたします。
ケース1.改革の推進役として活動し、改革がひと段落すれば活躍の場を変える(転職する)
ケース2.非常勤雇用または顧問委嘱、業務委託等の契約により、非常勤でCIO/CIO補佐業務を行う
しかし、この新しい人材登用、働き方の実現は、簡単ではありません。
具体的には以下のようなハードルが存在しています。
「人材を登用する企業におけるハードル」
1. どのような人材にCIOやCIO補佐の役割を任せるべきかの判断、見極めが難しい
2. 先例がなく、明確な意義を認識できなければ非常勤雇用は難しい
3. 外部人材にいきなり責任と権限を持たせることはできない
「CIOシェアード人材におけるハードル」
1. 非常勤とはいえ就職となると、企業の見極めに慎重になる
2. 少ない工数で成果を出せるかどうか不安がある
3. 兼業で働くことを考えたことがない、現職で兼業は禁止されている
このような人材を登用する企業側のハードルとCIOシェアード人材側のハードルを下げることで、「CIOシェアリング」という新しい「人材登用」の考え方、「働き方」の考え方を普及させることを目指して設立されたのが「CIOシェアリング協議会」です。
「CIOシェアリング協議会」について
本協議会は、前述の「CIOシェアリング」という新しい考え方を普及させると共に、以下3点をビジョンとし、活動しております。
「CIOシェアリング協議会のビジョン」
- より多くの企業に、CIO人材の知見とスキルを活用いただきたい
- CIO人材に、より多様な経験を獲得いただき、活躍の場をさらに広げていただきたい
- CIOをより魅力ある職種にし、将来CIOを目指す人材を増やしたい
実際にCIO人材として各界でご活躍中の名だたる方々を理事にお迎えし、次のような活動を行っております。
「CIOシェアリング協議会の活動内容」
- 講演会やセミナー等のイベントの企画、運営
- CIO人材のシェアのあり方に係る研究、及び成果等の広報、啓発活動
- IT投資、発注等の業務ノウハウに関する勉強会等の企画、運営
- ユーザ企業に対する診断や相談対応サービスの提供
- CIOに対するインタビュー記事の掲載
- 時事ネタ・トレンドに関するコラム記事の掲載
まとめ
IT活用の重要性は増しておりIT投資は増加傾向している一方で、IT投資をしたが思ったような成果が得られなかったというお声を頻繁に耳にします。
そのような現状を打開するには、自社の経営戦略にあわせたIT戦略の策定などの高難易度の業務を担うことができる高度なIT人材を迎え入れることが必要となります。
高度なIT人材を迎えるための形として、特にIT業務量の変動率が大きい中堅企業においては「CIOシェアリング」が有効と考えております。
本記事が読者の皆様の社内IT体制強化に向けたヒントになれば幸いです。
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投稿者プロフィール
- 新卒でSIerに入社し、法人営業、商品企画を担当。後に株式会社グローバル・パートナーズ・テクノロジーにコンサルタントとして入社。2021年より一般社団法人CIOシェアリング協議会の運営に関わる。
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