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 日経コンピュータ2020年7月9号の「CIOが挑む」に登場したチューリッヒ保険の木場武政氏が興味深い話をしている。東急ハンズ元CIO(最高情報責任者)の長谷川秀樹氏らと「CIOシェアリング協議会」を作ったというのだ。CIOが不在の企業に対して、現役CIOやCIO経験者が自身のスキルや能力を提供する。木場氏も副業として他社でCIOの役割を引き受けるという。

 CIOシェアリング自体はユニークな取り組みだが、外部の人材をCIOに迎え入れるのは珍しいことではない。木場氏も転職組であり、長谷川氏も東急ハンズからメルカリのCIOに転職するなど企業を渡り歩いている。5年ほど前に企業を渡り歩く「プロの経営者」が話題になり、同時に「プロのCIO」もクローズアップされたが、今ではCIOの転職は当たり前の光景となった。

 実際、「CIOが挑む」には2019年8月以降の1年間で13人のCIOが登場したが、実に7人が転職組だ。日清食品ホールディングスの喜多羅滋夫氏、テルモの竹内克也氏、みらかホールディングス(現H.U.グループホールディングス)の金子昌司氏はユーザー企業から、SGホールディングスの谷口友彦氏、中外製薬の志済聡子氏、ワタミの若林繁氏はITベンダーから転職した。

 転職組のCIOは、いわゆるCDO(最高デジタル責任者)の役割も担うケースが多い。例えば中外製薬の志済氏は、旧来のIT部門とデジタル部門を一体化させた組織の長として招かれた。みらかHDの金子氏はCIOとしてIT部門を立て直した後に、CDOとして新サービスの立ち上げを目指すデジタル推進組織を率いることになった。

IT担当者は「プロのCIO」を目指せ

 ここから見えてくるのは、多くの企業がDX(デジタル変革)を推進するために、その司令塔となる人材を外部に求めるようになったことだ。